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CES(Customer Effort Score)完全ガイド — 感情ではなくプロセスを測る指標

NPS・CSATと並ぶ第3の顧客指標「CES(顧客努力指標)」を解説。算出方法やベンチマークに加え、CESを「行動ログと突き合わせる4象限」で読む独自の方法、そして「努力削減>感動」が万能でない理由まで踏み込みます。

CES(Customer Effort Score、顧客努力指標)は、NPS・CSATと並ぶ第3の顧客指標として近年注目を集めています。Harvard Business Review が「ロイヤルティを高めるのは感動より、努力を減らすこと」という研究を発表して以来、特にカスタマーサポートやSaaS領域で重視されるようになりました。

ただ、CESには他の指標と決定的に違う性質があります。CESは「感情」ではなく「プロセス」を測る指標 だということです。この性質を理解しないまま、満足度と同じ感覚で使うと、CESは持ち味を発揮できません。本記事は基本を押さえたうえで、CESを「行動ログと突き合わせて読む」という現場目線の使い方まで踏み込みます。

CESとは何か

CESは、顧客が目的を達成するためにどれだけの手間(努力)を要したか を測る指標です。代表的な設問形式は2つあります。

旧型(CES 1.0)

「あなたの問題を解決するために、当社はどれだけの努力を要求しましたか?」 (1〜5段階:非常に多くの努力を要した — ほとんど努力を要しなかった)

新型(CES 2.0)

「『当社のおかげで、私の用件はかんたんに済んだ』 — この主張にどれだけ同意しますか?」 (1〜7段階:強く反対 — 強く同意)

現在は新型(CES 2.0)が主流です。肯定文への同意度を聞く形式のほうが、文化的バイアスが少なく回答が安定します。

なぜCESが重要なのか

Harvard Business Review の調査では、

という結論が出ています。つまり、

「すごい!」と思わせるより、「面倒だった」と思わせないほうが解約防止に直結する

という発想です。

「努力削減>感動」は万能ではない — CESが向く接点・向かない接点

ここで一つ、多くのCES解説が省略する重要な但し書きを置きます。

HBRのあの有名な結論は、「カスタマーサポート」という文脈で得られたもの です。「問題を抱えた顧客が、それを解決しに来る」場面では、努力を減らすことが正義です。誰もサポート対応に「感動」を求めていません。

しかし、すべての顧客接点が問題解決型ではありません。体験そのものが価値である接点では、CESはむしろ的外れな指標になります。

CESが向く接点 CESが向かない接点
サポート問い合わせ 高級サービスの接客体験
解約・返品手続き エンタメ・趣味性の高い商品の利用
オンボーディング設定 ブランド体験・店舗体験
申込・決済フロー 「探す楽しさ」が価値の探索体験

「向かない」側の接点で「かんたんに済みましたか?」と聞いても、顧客は「いや、そういうことを楽しみに来ているのですが…」となります。CESは 「手間を減らすべき接点」専用の指標 だと割り切ってください。手間そのものが楽しい接点には、CSATやNPSを使います。

CESの算出方法

7段階の場合、回答の 平均値 をスコアとします(NPSのような特殊計算は不要)。例:

業界ベンチマーク(7段階):

CESを使うべきタイミング

CESは 接点直後 に聞くのが鉄則です。

接点 配信タイミング
サポート対応 解決直後
オンボーディング セットアップ完了直後
解約手続き 解約完了画面
返品・返金 プロセス完了直後

体験から時間が空くほど「努力の記憶」が薄れ、評価が中庸に寄ります。

CES vs NPS vs CSAT

観点 CES NPS CSAT
測るもの 接点での努力量 全体的な推奨意向 体験への満足度
性質 プロセス指標 関係性指標 感情指標
解約予測力 強い 弱め
経営指標 △(接点限定)
改善アクションの直結度 高い 高い

CESは 解約予測接点改善 に最も強く、NPSやCSATを補完する位置付けです。

CESスコア単体は嘘をつく — 行動ログと突き合わせて読む

ここが本記事の核心です。CESは「プロセス指標」だと述べました。だからこそ、CESスコア単体を眺めるのは、ほとんど無意味 です。

理由はシンプルで、CESは主観だからです。まったく同じ「3回やりとりして30分かかったサポート」でも、期待値の低い顧客は「ラクだった(高スコア)」と答え、期待値の高い顧客は「手間だった(低スコア)」と答えます。スコアだけ見ても、それが「プロセスが良かった」のか「顧客の期待値が低かった」のか区別できません。

そこで、CESの本当の使い方は——CESスコア(主観)と、客観的な行動ログを突き合わせる ことです。突き合わせるログの例:

この2軸でマトリクスを作ると、CESスコアが一気に「読める」ようになります。

ログが良い(手間が少ない) ログが悪い(手間が多い)
CESスコアが高い ✅ 健全。この接点は維持 ⚠️ 危険信号。顧客が低品質に慣らされている。期待値が低いだけ
CESスコアが低い ⚠️ 期待値が高すぎ/説明不足。コミュニケーションを直す 🔴 改善対象が明確。プロセスそのものを直す

特に注目すべきは右上の 「スコア高×ログ悪」 です。CESスコアだけ見ていたら「問題なし」と判断してしまう接点ですが、実際には「顧客がもう諦めて、低い品質を当たり前だと思っている」状態かもしれません。これは将来の解約予備軍です。スコアという主観だけを追っていると、この危険信号を完全に見逃します。

CESを使うときの落とし穴

接点を選ばないと意味が薄い

CESは特定の体験について聞く指標です。「サービス全体の努力量」のような曖昧な質問だと、回答者の頭に浮かぶ場面がバラバラで、ノイズの大きいデータになります。

自由記述とセットで運用

低スコア(1〜3)を付けた回答者には、

「もっとかんたんにするために、何を変えるべきだと思いますか?」

という自由記述を続けて聞くと、改善ヒントが豊富に得られます。

高スコアでも解約する顧客はいる

CESスコアが高くても、価格やニーズミスマッチで解約することはあります。CES単独で全てを語らず、他指標と組み合わせて判断してください。

具体的な改善アクション例

CES が低い接点(かつログも悪い接点)が見つかったら、以下が定石です。

これらは全て「顧客の努力を減らす」方向の施策です。

まとめ

CESの活用ポイント:

  1. CESは 「手間を減らすべき接点」専用。体験そのものが価値の接点には使わない
  2. 接点直後 に、新型(同意度方式) で聞く
  3. 自由記述とセット で運用する
  4. スコア単体で判断せず、行動ログと突き合わせて4象限で読む

特に「スコア高×ログ悪」の危険信号を見つけられることが、CESを正しく使う最大の価値です。

レポアンの AI チャットに「CES形式で問い合わせ後アンケートを作って」と伝えれば、同意度スケールを使った設問構成が自動生成されます。サポート問い合わせ後 のテンプレートをベースに改造するのもスムーズです。

CSAT・NPS との併用パターンは NPS vs CSAT で詳しく解説しています。回答後の AI 分析機能(詳細)で「努力を増やしている要因」を自由記述から自動抽出できます。

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