ユーザーインタビューで「どんな質問をすれば良いか分からない」「質問例集を見ても、自社で使える形に落とし込めない」——これは多くの実施者が抱える共通の悩みです。
本記事では、目的別に 実務で使える質問例 を整理しつつ、「答えやすい質問が必ずしも良い質問ではない」 という質問設計の本質まで踏み込みます。
ユーザーインタビューの「目的別」5カテゴリ
| 目的 | 主な質問タイプ |
|---|---|
| オープニング | アイスブレイク、背景理解 |
| 利用シーン深掘り | 具体的な状況、行動、感情 |
| 価値の言語化 | 「何を解決しているか」の発見 |
| 競合比較 | 選択基準、過去の検討 |
| 解約・継続理由 | 「なぜ離れる/残るか」 |
それぞれで使える質問例を順番に解説します。
カテゴリ1:オープニング(アイスブレイク)
最初の5〜10分で 相手をリラックスさせ、対話モードを作る 質問。
質問例
1. 「最近の仕事で、特に印象的だったことを教えてください」
2. 「普段、どんな日常を過ごされていますか?朝のルーティンから簡単に」
3. 「自己紹介で『私は○○です』と言うとしたら、どう紹介されますか?」
4. 「最近、誰かに薦めたサービスやプロダクトはありますか?」
5. 「逆に、最近やめたサービスはありますか?」
設計のポイント
- 抽象的な質問より具体的な質問 から入る
- 自社サービスの話には すぐ入らない
- 相手が 得意な話題 から始める
カテゴリ2:利用シーン深掘り
最も重要なカテゴリ。「具体的な状況と行動」 を時系列で再現してもらいます。
質問例
1. 「最後に当社サービスを使ったのは、いつ・どこで・どんな状況でしたか?」
2. 「その時、何を達成しようとしていましたか?」
3. 「使う前に、どんな準備や検討をしましたか?」
4. 「使っている最中、迷ったり困ったりした瞬間はありましたか?」
5. 「使い終わった後、どんな気持ちでしたか?」
6. 「もしサービスがなかったら、何で代替しましたか?」
7. 「使うのに時間はどれくらいかかりましたか?」
8. 「次に使うとしたら、いつ頃の予定ですか?」
設計のポイント
- 「最後に使ったのはいつ?」 で具体的な記憶を呼び起こす
- 「いつもどう使ってますか」より 「最後の1回」 を聞く
- 行動の 時系列 を再現してもらう
- 感情の動き も同時に追う
NG質問の例
× 「いつもどんなふうに使ってますか?」(抽象的すぎる)
× 「便利ですか?」(誘導的)
× 「満足度は何点ですか?」(数値化はアンケート向き)
カテゴリ3:価値の言語化
このサービスが その人にとって何を解決しているか を、本人にも気付いてもらう質問。
質問例
1. 「もし当社サービスが明日なくなったら、何が困りますか?」
2. 「他のサービスでは満たされないものがあれば、教えてください」
3. 「友人にこのサービスを説明するとしたら、どう説明しますか?」
4. 「このサービスを使っていることを、誰かに知られたいですか?知られたくないですか?」
5. 「このサービスを使うことで、自分のどんな部分が表現できますか?」
6. 「使っている時の自分の気分を、色や天気で表すと?」
7. 「サービスの料金を倍にすると言われたら、続けますか?」
設計のポイント
- 「あったらどうか」より「なかったらどうか」 の方が深い
- メタファー(色、天気、動物等)で 感情を引き出す
- 仮想的な前提 で深層動機を探る
「もし倍の料金だったら?」「もし誰にも見られない世界だったら?」のような仮想質問は、普段意識しない動機 を引き出します。
カテゴリ4:競合比較
選択基準と検討プロセスを理解する質問。
質問例
1. 「このサービスを選ぶ前に、検討していた他の選択肢はありましたか?」
2. 「最終的にこのサービスにした、決定打は何でしたか?」
3. 「他のサービスを使ったことがあれば、違いを教えてください」
4. 「もし他社サービスのほうが安かったら、乗り換えますか?」
5. 「友人が同じカテゴリで悩んでいたら、何をアドバイスしますか?」
6. 「この業界・カテゴリのサービス全般に、不満はありますか?」
設計のポイント
- 「比較した」と「したつもり」は別。実際にどう比較したか を聞く
- 「決定打」を聞いて、選択基準 を引き出す
- 第三者へのアドバイス という形で、客観性を引き出す
カテゴリ5:解約・継続理由
最も難しいカテゴリ。本音を引き出すには高度なスキル が必要です。
解約理由の質問例
1. 「解約を決めた、最初のきっかけは何でしたか?」
2. 「解約のタイミングは、何かイベントと関係していましたか?」
3. 「解約する直前に、最後に試したことはありますか?」
4. 「もしサービスが○○を改善していたら、続けていたと思いますか?」
5. 「解約後、どんな気持ちでしたか?後悔・安堵・無関心、どれが近いですか?」
6. 「他社に乗り換えた場合、その先で得られている価値は何ですか?」
7. 「将来、再契約する可能性はありますか?どんな条件なら?」
継続理由の質問例
1. 「最近、解約を考えた瞬間はありましたか?それを思いとどまった理由は?」
2. 「もし契約をリセットして、ゼロから選び直すとしたら、また選びますか?」
3. 「友人から『なぜ続けてるの?』と聞かれたら、どう答えますか?」
4. 「契約を続けることで、得ているものを3つ挙げてください」
5. 「次の更新タイミングで、何があれば続けますか?何があれば離れますか?」
設計のポイント
- 解約は 怒り・後悔・諦め など複雑な感情を伴うため、丁寧に
- 「最後に試したこと」 で潜在的な期待値が見える
- 継続理由は 「気付いていない理由」 が大半。仮想質問で引き出す
ここからが本題 — 「答えやすい質問」と「良い質問」のトレードオフ
答えやすい質問の特徴
「便利ですか?」
「満足してますか?」
「使い続けますか?」
これらは 答えやすいが、得られる情報の深さが浅い。「はい/いいえ」で済んでしまう質問は、インタビュー向きではありません。
良い質問の特徴
「もしこのサービスが明日なくなったら、何で代替しますか?」
「使うのを誰かに見られたら、どう感じますか?」
「料金を倍にすると言われたら、続けますか?」
これらは 答えにくいが、相手が考え込み、深い言語化が起きる。良い質問は、相手に 「自分はそう思っていたのか」と気付かせる 力があります。
トレードオフの本質
| 観点 | 答えやすい質問 | 良い質問 |
|---|---|---|
| 即答性 | 高い | 低い(数秒考える) |
| 情報の深さ | 浅い | 深い |
| 相手の負担 | 小さい | やや大きい |
| 発見の量 | 少ない | 多い |
インタビューでは 「相手に少し考えさせる」質問を中心にする のが正解。10分で20問より、60分で15問のほうが深い発見が生まれます。
質問設計の禁じ手
禁じ手1:誘導質問
× 「これ、便利ですよね?」
○ 「これを使ってみてどう感じましたか?」
禁じ手2:YES/NOで終わる質問
× 「満足してますか?」
○ 「満足してる部分・してない部分、それぞれ教えてください」
禁じ手3:複数の質問を同時に投げる
× 「使い始めた理由と、続けてる理由と、不満な点を教えてください」
○ 「まず、使い始めた理由から聞かせてください」
禁じ手4:仮説の押し付け
× 「つまり、便利だから使ってるってことですよね?」
○ 「いま伺ったのは、便利だから、ということでしょうか?」
禁じ手5:抽象的すぎる質問
× 「いつもどう使ってますか?」
○ 「最後に使った時のことを、できるだけ具体的に教えてください」
インタビュー質問集の運用
運用1:質問集はそのまま使わない
「質問例集」をそのまま順番に聞くと、機械的なインタビュー になります。質問例は 引き出しとして持っておく だけで、実際は会話の流れに合わせて選ぶ。
運用2:「次の質問」より「掘り下げ」を優先
相手が興味深い発言をした時、用意した次の質問より その発言を掘り下げる ことを優先。「もう少し詳しく」「具体的にはどんな場面で?」が最強の追い質問です。
運用3:沈黙を恐れない
相手が考えている沈黙は 深い回答が出てくる前兆。沈黙を埋めようと焦って次の質問をすると、その回答を逃します。
運用4:録音を必ず取る
メモは要点のみ、相手の目を見て話す。詳細は 録音から後で書き起こす。リアルタイムで完璧なメモを取ろうとすると、対話の質が落ちます。
アンケート調査と組み合わせる
ユーザーインタビューは アンケートとセット で運用するとさらに効果的:
- アンケートで異変を発見 → 該当者にインタビュー(深掘り)
- インタビューで仮説生成 → アンケートで規模検証(仮説検証)
- インタビュー前後にアンケート(インタビュー対象者の事前情報、事後の感想)
詳しくは 定量×定性の組み合わせ方 を参照。
レポアンとユーザーインタビュー
レポアンは「インタビュー前後のアンケート」で連携できます。
- インタビュー対象者の事前スクリーニング — 適切な5名を絞り込むためのアンケート
- インタビュー後の規模検証 — n=5の仮説を全顧客で検証
- AIによる質問設計支援 — インタビュースクリプト作成のヒント
- 自由記述AI分析 — インタビュー記録のテーマ抽出を補助
まとめ
ユーザーインタビューの質問設計は:
- 5カテゴリ(オープニング、利用シーン、価値の言語化、競合比較、解約/継続)で構成する
- 答えやすい質問より、相手に考えさせる質問が深い発見を生む
- 仮想質問(もし○○だったら?)で深層動機を引き出す
- メタファー、第三者視点、過去再現を駆使する
- 誘導・YES/NO・複合質問・仮説押し付けは禁じ手
質問例集はあくまで 引き出し。実際のインタビューでは、相手の発言を掘り下げる柔軟性こそが、深い発見の源です。